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損害賠償金を給与から控除できるか?   ( 2012.05.11 )

 従業員のミスや不注意によって会社に損害を与えることはあり得ることです。それが、会社で定めたルールを無視して、どう考えても従業員の責任は免れない場合には、会社は損害賠償を求めることができます。(因みに裁判では、従業員に余程の過失が無い限り、会社にも保険に入るなど危機管理責任があり、教育責任や保安管理責任があるので、全額払えというのは難しいようです)
 

 この場合、賠償金を給与から控除することができるようにルール化しても問題ないのか? と、云う疑問が発生します。

[賃金支払いの原則]

 労働基準法(第24条第1項)は、「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。」と定めています。このように賃金は『全額払い』が原則となっていて、例外的に次の二つの場合に限り、賃金の一部を控除して支払うことが認められています。

①法令に別段の定めがある場合

(例)所得税の源泉徴収、住民税の特別徴収、社会保険料、労働基準法第91条に基づく制裁金

②労使間で締結した書面による協定がある場合

(例)住宅の家賃、社内積立金、組合費

 なお、ここでいう「控除」とは、支払額が確定している労働者の賃金債権についてその一部を差し引くことをいいます。したがって、欠勤や遅刻、早退などがあった場合に固定的賃金を労働の提供がなかった限度で支払わないこととすることは、その部分については元から賃金債権が発生していませんので、全額払いの原則における例外的な「控除」にはあたりません。

[賠償金と賃金との相殺]

 前記②の労使協定によって控除できるのは、家賃などの支払いの事由と金額が明白なものに限られますので、損害賠償金は発生原因や労働者の過失の程度、損害額の評価など不確定な要素が多いことから、これを労働者の有する賃金債権と相殺することは例外事項には相当せず、労働基準法の全額払いの趣旨に反するものと解されています。したがって労使協定によって一方的な控除が可能なようにルール化することはできないとされています。

 しかし、個別のケースに限られますが、労働者が損害賠償金を支払うことについて、その実際の支払方法として賃金から控除することを自ら選択するなど、労使間の「合意」によって相殺することは、労働者の完全に自由な意思に基づいていると認めるに足りる合理的な理由があるとして、全額払いの原則によって禁止されるものではないとした裁判例もあります。

[賠償予定の禁止]

 これに関連しているので取り上げますが、労働基準法第16条では、あらかじめ違約金を定め、または損害賠償額を予定する労働契約を結ぶことを禁止しています。

 「損害賠償を予定する」とは、損害額を一定の金額として定めておくことをいいます。つまり、実害があったかどうか、実害額はいくらなのか、過失の程度は、といった事情を考慮せずに機械的に賠償額を決めておくことはできません。

 したがって、実際に労働者に損害賠償額の一部を負担させるためには、その事案ごとに事情を十分に考慮して、労働者が納得できる金額を決めることが必要となるでしょう。

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